No.749 淑女と髭
「淑女と髭」 1932年度作品
小津 安二郎
立派な口髭、顎髭を蓄えて容姿、言動を気にもとめず、気楽な学生生活を過ごしていた岡嶋(岡田時彦)も、就職活動の時期になった。
ある日街角で、不良のモガに絡まれていた廣子(川崎弘子)を通りがかった岡嶋が助けた。モガはナイフを持っていたが、岡嶋は得意の剣道でそれを撃退した。
岡嶋はバンカラ気質があり、決して女性に好かれるような男ではなかった。それは会社訪問でも言えることであった。
なかなか就職先が見つからない岡嶋だったが、ある会社の面接で廣子と再会した。その会社にもご縁がなかった岡嶋だが、廣子は髭を剃り小奇麗にすることを岡嶋に提案した。
二進も三進も(にっちもさっちも)いかない状況の岡嶋は髭を剃り、髪も整えることにした。その効果は覿面(てきめん)だった。岡嶋は採用された。
岡嶋はさっそく廣子の家に報告とお礼に伺った。廣子には縁談話があったが、どうにも煮え切らない態度に母親も困っていた。だが、岡嶋を出迎えた廣子の様子を見て、母親は廣子の心を知り安堵した。
小津安二郎監督のヒューマンドラマです。そして無声映画です。
以前ご紹介した「大人の見る繪本 生れてはみたけれど」でも書きましたが、サイレント映画は画面に注目しないといけません。時折、字幕も表示されますが、それも含めて画面をしっかり見ていないと、重要なポイントを見逃します。俳優さんの表情や口の動き、そしてこの作品はコメディ要素が多いのに、それを笑うことができません。無音状態で笑う自分の姿もこれまた滑稽に二度笑えます。
主演の岡田時彦さんは、髭がある時と無い時で別人です。どちらが良いかと聞かれたら、髭がない方です。あの笑顔は誰もが惚れるのが分かります。場面によってはハンフリー・ボガートにも見えます。
お相手の川崎弘子さんは、ヤマトナデシコを地でいく良妻賢母が似合っています。モガと岡嶋を取り合うことになりますが、廣子の岡嶋への献身ぶりにモガが身をひくのは納得できます。
ラストの少し前、モガと岡嶋が家に帰るシーンは、フランス映画を観ているような雰囲気があります。いえ、ハンフリー・ボガードが登場するならハリウッド映画でしょう。いずれにしてもこれは凄いシーンです。
「二進も三進も(にっちもさっちも)」この言葉、なかなか文章で書くことはありません(汗)。この作品には、この言葉がいきなり浮かびました。そして某グループが歌っていた楽曲の歌詞もメロディ付きで脳内を流れました(不明な人は検索 or AI;カラオケも在りました;笑)。
ラストはちょっと涙が潤み、ダメ押しの台詞が笑い納めです。
笑える度 ★★★
ファイト度 ☆☆☆
ほのぼの度 ★★★★★
スッキリ度 ☆☆
感動度 ★★★
