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No.203 自転車泥棒

作品名

「自転車泥棒」’48年度作品

監督

ヴィットリオ・デ・シーカ

出演

  • ランベルト・マジョラーニ

あらすじ

 敗戦後のイタリアは長く続く不況で人々の暮らしはどん底だった。長い間
失業していたアントニオ(ランベルト・マジョラーニ)にようやく仕事が斡
旋された。が、その条件に愕然とした。自転車が必須だったからだ。アント
ニオの家に自転車はあったのだが、今は質札に代わっていた。せっかくのチ
ャンスを逃すわけにいかず、奥さんに相談した処、奥さんは嫁入り道具であ
った高級シーツを質に入れ、代わりに自転車を出してきた。
 アントニオの仕事はポスター貼りだった。自転車に乗って町中にポスター
を貼り回った。親子が生活するためにアントニオは一生懸命に働いた。これ
で大金が手に入る。そして何よりも安定した生活ができるとアントニオの奥
さんや一人息子も大喜びだった。
 ところが災難は突然訪れた。ポスターを貼っている隙に大切な自転車を盗
まれてしまったのだ。警察へ被害届を出すが、自転車一台の盗難では警察も
真剣には取り合ってくれなかった。仕方なく同僚や息子を引き連れてヤミ市
へ自転車を探しに出掛けた。

お勧めポイント

 とても切ない物語です。現代の私たちにはたかが自転車の一台と思われる
人も多いでしょう。でもこの物語をずっと見ていると、その大切さが良く判
ります。自転車を家の中で保管しているだけでも、その存在が判るところで
す。
 主人公はアントニオなのですが、彼と息子の数々のやりとりが哀愁を誘い、
特に子役の言動に目が奪われます。雨の中を走り回り泥水の中で倒れますが、
涙一つ見せずに立っているシーンが印象に残りました。また、ひたすら自転
車を探してハラペコになっているのに、食事やトイレさえも我慢する姿に驚
きました。でも探し疲れたアントニオがなけなしの金で息子と食事するシー
ンは心温まります。二人の心中が手にとれて判ります。
 「ライフ・イズ・ビューティフル」でもありましたが、自転車への夫婦二
人乗りの方法が、とってもおしゃれだなと思いました。あんな乗り方を日本
で見たことがないと自転車をジッと眺めて、その理由が判りました。これは
映画を見てから自転車を眺めると一目瞭然だと思います。昔の自転車に乗っ
て、こういう二人乗りをしてみたいですね。
 さてこの物語の結末はどうなるのでしょうか?自転車は見つかるのでし
ょうか?アントニオが最後に取った行動は?そしてその結末は。物語の途中
から皆さんもアントニオ自身になって御覧になられると思います。特に子供
さんをお持ちの方には、その切なさ、決まりの悪さを痛感することでしょう。
 正月だからといって、餅を買うお金欲しさに強盗をする人もいなくなりま
した。その代わりにお米を盗む人たちは増えています。今の日本は、この映
画と似たような状況になっているのでしょうか。

ポイント

笑える度 :★★
ファイト度:☆☆
ほのぼの度:★★
スッキリ度:☆
感動度  :★★★★