No.607 しあわせへのまわり道
「しあわせへのまわり道」 ‘14年度作品
イザベル・コイシェ
ニューヨークに住む人気書評家のウェンディ(パトリシア・クラークソン)は旦那と決別した。結婚生活21年の間に7年おきに3度の浮気をされ、今度はとうとう離婚に至った。
住み慣れた家は、夫の思い出が一杯で気が滅入るばかりだ。離れて暮らす一人娘は自分の処に遊びに来ることを勧めたが、車の運転が出来ないウェンディには、それもままならない。
悩んでいた所にタクシードライバーのダルワーン(ベン・キングズレー)が車中に忘れたものを届けてくれた。そのタクシーには車の個人レッスンを引き受ける旨の看板が付けられていた。これ幸いとウェンディはレッスンを依頼した。
ダルワーンとの個人レッスンが始まったが、長年、助手席愛好家のウェンディには車の運転は予想以上の苦痛であった。さらに夫のことが頭をよぎり、運転に集中することも難しかった。
しかしダルワーンは優しくウェンディを導いてくれて、徐々に運転は上達していった。さらにインド人のダルワーンとの異文化に触れ合うことで、ウェンディの心も和らいでいった。それはダルワーンにも言えることであった。
人生も道路もどこかへ繋がっている
何かホッとしてしまう作品です。主人公のウェンディのように、苛立ちを覚えていた心も、この作品を観終わる頃には癒されています。ゆったりとした気分で暮らしたくなります。
この作品で、車の運転も人生の歩き方も、よく似ていると表現されています。いきなり車の前を横切る通行人が登場します。当然、主人公は驚きと怒りを覚えるのですが、教官のダルワーンは、『他人は自分の思っているようには動いてくれない』だから、周りの人を注意して見ることが重要だと諭してくれます。本当にその通りです。『他人と過去は変えられない』という言葉通り、変えられるのは自分だけだとも気付かされます。
インドでは全く知らない人と結婚することがあるようです。日本でも昔は披露宴で初めて顔を見たという話をよく聞かされました。この作品では母国インドを遠く離れた人が結婚するから、このような状況になってしまったのかもしれませんが、とても斬新に思えます。
昨日までは他人だった人々が、今日は一つ屋根の下で暮らすのは、不思議なご縁としか言えません。しかも奥さんは誰一人知り合いのいない町で暮らすのですから、心底疲れると思います。この辺りも本作では上手く描かれています。公園デビューを連想するようなシーンで、これも温かく見守りたくなります。
インドの男性がターバンを脱ぐと、あのような姿になるのだと、本作で初めて知りました。皆がみんなそうではないのかもしれませんが、私にはショッキングでした。
まだまだ寒い日が続きますが、本作でほっこりと春の訪れを予感してみてください。
笑える度 ★★★
ファイト度 ☆☆☆☆
ほのぼの度 ★★★★★
スッキリ度 ☆☆☆
感動度 ★★
