作品名
「北京的西瓜」’89年度作品
監督
大林 宣彦
出演
- ベンガル
- もたいまさこ
あらすじ
千葉県船橋市のとある八百屋「八百春」に、一人の青年がやってきた。何
を買うでもなく長い間、野菜を見つめていた。翌日、再びその青年が店にや
ってきた。主人の春三(ベンガル)が問い詰めると、野菜が欲しいが高いと
言う。50円のチンゲン菜を5円にしろと春三に迫る。この青年は中国から
の留学生で日本の物価高では生活できないのだった。しぶしぶジャンケンに
勝ったら10円にするということで決着がついた。
翌日、彼は再び現れて、ジャンケンを迫った。これが最後とジャンケンを
したが、今日は青年が勝つことができなかった。
春三が配達をしていると、例の青年が運ばれる途中だった。栄養失調で倒
れたのだった。
人の良い春三は留学生たちを集めてごちそうをすることにした。それがき
っかけで春三と留学生たちの交流が始まった。しかし元来世話好きの春三は、
八百屋の仕事もそっちのけで留学生たちと遊び歩くようになった。さらに仕
入れに必要なお金さえも彼らのためにつぎ込み始めた。当然、女房の美智(も
たいまさこ)は快く思わず、だんだん春三との仲は冷えていった。
お勧めポイント
中国からの留学生との親交を深め、彼らからお父さんとまで言われるよう
になった堀越春三さん一家の実話です。
物語の途中から、自己本位に思える留学生たちの行動に、憤りを感じるぐ
らいです。その結果、八百春一家は一家離散の直前までに追い込まれてしま
います。どうしてそこまで彼らに尽くすのでしょうか?色々な要因はありま
すが、基本的に、お人好しで頼りにされたら断れない性格なのです。
この作品の撮影秘話をご紹介しておきます。家庭崩壊の危機が迫って、春
三さんと美智さんが、とうとう大喧嘩を始めるシーンがあります。その撮影
現場で、撮影中にも関わらず、後ろのほうから泣き声が聞こえてきたそうで
す。大林監督は、撮影中なのはスタッフの誰もが判っていることなのに、誰
だろうと振り返ると、見学に来ていた春三さんと美智さんのご本人達だった
のです。まさに自分たちの喧嘩もこんな感じだったと、辛かった当時を思い
出したそうです。
物語が進むにつれて、仲の良かった家族がすさんでいきます。だんだん顔
色が曇っていく美智さんの表情がすべて語っています。
これだけで終わる作品ならば、誰も見たくないと思いますし、私もご紹介
しません。春三さんが度重なる心労から入院した頃から、彼をお父さんとま
で慕う留学生たちの愛情が画面を通じて伝わってきます。中国のことわざに
「受一滴水恩 必将湧水相報」というのがあるそうです。この言葉が物語の
ラストで紹介されます。その意味を知って、留学生たちからのプレゼントを
見たら、春三さん一家の苦労が報われ、この作品を観た人も晴れた気持ちで、
見終えることができます。私は涙が出ました。
この当時、日本の物価の10分の一が、中国の物価だったそうです。どこ
か日本人とは違うようでいて、同じ心をもった人間には違いないというのを、
この作品で実感しました。
タイトルの「北京的西瓜」ですが、物語の中で、西瓜(スイカ)は中国の
西瓜と日本の西瓜とどちらが美味しいのか、春三さんと留学生の間で言い合
いになるシーンからきています。
この週末は、この作品をご覧になってみませんか。撮影当時は天安門広場
事件の影響で、中国ロケも出来なかったという当時の事情も盛り込まれてい
ます。
ポイント
笑える度 :★★
ファイト度:☆☆
ほのぼの度:★★★
スッキリ度:☆☆☆
感動度 :★★★


