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No.335 リアリズムの宿

作品名

「リアリズムの宿」’03年度作品

監督

山下 敦弘

出演

  • 長塚 圭史
  • 山本 浩司

あらすじ

 男3人で旅行に行くことになっていたが、お互いの知人である奴が旅行に
遅れてしまい、挨拶程度の面識しかない坪井(長塚 圭史)と木下(山本 浩
司)だけで旅館を目指した。

 それぞれが映画監督と脚本家であり、映画という共通の話題があるはずだ
が、それでも盛り上がらずにいた。

 何をするでもなく、海岸に佇んでいると、一人の少女に出会った。彼女は
一人で泳いでいたのだが、衣服や持ち物を流されてしまい途方にくれている
という。

 しかたなく3人で旅を続けたが、少女はいきなりいなくなってしまう。や
がてお金も乏しくなり、だんだんひなびた旅館に泊まるようになっていった。

お勧めポイント

 作品名を聞いてピンときた人も多いと思います。つげ義春さんの原作を映
像化したものです。

 私もつげ義春さんの作品は、よく読みました。あの独特の雰囲気が映画化
できるものだろうかと思いました。たしかこの作品以外でも映画化されたも
のがありましたが、忠実に原作を再現しているこの作品は、一見の価値があ
ります。

 一番笑えるのは、旅館の亭主が客の持ち込んだウィスキーを無断で飲んで
しまうシーンです。その後、ベロベロで部屋にやってくるくだりがあるので
すが、そのベロベロぶりがどのように演じられるのか、楽しみでした。

 「リアリズムの宿」「会津の釣り宿」の2作が盛り込んであり、前半が「会
津の釣り宿」を、後半に「リアリズムの宿」となっています。原作にはない
つなぎのシーンも笑えて、つげ義春ワールド全開です。

 原作とちょっと違うのは、最後に盛り上がりがある点です。ほとんど他人
に近い二人が、ちょっとずつお互いを理解し、友人になるまでを描いていま
す。

 誰でも他人から友人になるのは、こんな感じなのかと思います。お互いの
ちょっとした歩みよる姿勢と、我の部分を見せることで、理解していくので
しょうか。この作品ではいきなり一日中同伴という過酷な始まりですが。

 主演の長塚圭史さんは、以前ご紹介した「イヌゴエ」でも独特の雰囲気で
したが、この作品でもなんとも言えないキャラを演じています。

 変わらぬ日々を送っているようでも、ちょっとずつ未来へ向かって前進し
ている若者の姿を美しく、そして現実的に描かれた一作です。

ポイント

笑える度 :★★
ファイト度:☆☆☆☆
ほのぼの度:★★
スッキリ度:☆☆☆
感動度  :★★