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No.406 大鹿村騒動記

作品名

「大鹿村騒動記」 ’11年度作品

監督

阪本 順治

出演

  • 原田 芳雄
  • 大楠 道代
  • 岸部 一徳

あらすじ

 長野県大鹿村では、300年もの間、村人による歌舞伎が公演されている。
村人の一人、風祭善(原田 芳雄)は、その歌舞伎の花形役者であった。彼は
料理屋を営んでいるが、女房の貴子(大楠 道代)は親友の治(岸部 一徳)
と駆け落ちして東京に出て行き、早18年になる。
 
 秋公演が近づき、出演者の村人たちは、今一つ稽古に集中出来ていなかった。
その理由は、村にリニア新幹線の誘致をめぐって紛争していたからである。
 
 突然、東京から貴子と治が村に帰ってきた。善に貴子を返すと言い出した。
貴子が認知症になり、治のことを善と思い込み、善のことばかり話すからであ
った。当然、善と治は大喧嘩が始まった。でも幼馴染で親友の二人であったか
ら、すぐに打ち解けてしまった。
 
 とりあえず、善の所に居座った治と貴子であったが、貴子の認知症は善の予
想を上回るもので、善も稽古に身が入らなくなった。
 
 村人たちの中にも事故で出演が無理になった者や、共演者同士が仲たがいし
て稽古が進まない状況が続いた。
 
 

お勧めポイント

 原田芳雄さんの遺作になったヒューマンドラマです。
 
 村人という顔見知りが、日常とは別世界の歌舞伎役者を演じるのは、普段
の人柄を知っていればいるほど、面白いのではないでしょうか?この作品で
も主な出演者が仕事をしながら練習するシーンが多数あります。公演では化
粧をして、華やかな衣装を身にまとい、これがあの人かと、もう一度、練習
シーンを比較して見てしまいます。
 
 久々に帰ってきた治に、役人が18年分の住民税を払えと押し掛けます。
カマドウマ(コオロギの種類)を引きそうになったと、バイクを転倒させる
郵便局員がいます。どの村人も個性溢れていて、本当に楽しいです。
 
 主演はこの作品が遺作になった原田 芳雄さんですが、上にあげた出演者
以外にも著名な俳優さんが登場します。三国連太郎さん、佐藤浩市さんの親
子共演や、石橋蓮司さんや松たか子さん、瑛太さん、でんでんさんなどが登
場して、物語を盛り上げてくれます。
 
 中国からの農業研修生や性同一性障害、介護など、日本の現在を物語る内
容も含まれていて、興味深い内容になっています。

 役所の広報をやっている松たか子さんの役柄も面白いです。特に善さんと
の時効に関する会話は笑ってしまいます。

 阪本順治監督ですから、いつもながらに、人間の躍動感をヒシヒシと感じ
る作品になっています。主演者だけでなく登場人物すべてのドキュメント作
品を見ているような臨場感があります。
 
 歌舞伎公演の模様は、役者のセリフも、立ち振る舞いにも一喜一憂してし
まいます。思わず観客になってしまって、おひねりを投げたくなります(笑)。
 
 原田芳雄さんといえば、若いころはハードボイルドな役柄が多かったです
が、齢をとられてからの、すっ呆けた老人の役柄もよく似合っています。こ
の作品でも、非常に面白い役どころです。そして、歌舞伎の場面では、さす
がの千両役者ぶりを見せてくれています。原田芳雄さん、たくさんの作品を
ありがとうございました。ご冥福を心よりお祈りします。
 
 あと、音楽が素敵です。物語が始まると同時に流れる音楽が、この作品を
じっくり見ようと思わせてくれます。そしてエンディングで流れるのは、忌
野清志郎さんのやさしい歌声です。
 
 どうかこの週末は、この作品を楽しんでください。やっぱり日本酒が似合
います。大吟醸をお薦めします。

ポイント

笑える度 :★★★
ファイト度:☆☆☆☆
ほのぼの度:★★★★★
スッキリ度:☆☆☆☆
感動度  :★★★★