配信

No.456 飢餓海峡

作品名

「飢餓海峡」 ‘65年度作品

監督

内田 吐夢

出演

  • 三國 連太郎
  • 左 幸子
  • 伴 淳三郎
  • 高倉 健

あらすじ

 昭和22年9月20日、台風のため函館において青函連絡船が難破した。856
名の乗客のうち、532名が死亡する未曾有の事故であった。
 
 身元不明の遺体が2体残った。この2体は乗客名簿になく、何処の誰なの
か不明のままであった。
 
 函館署の弓坂刑事(伴 淳三郎)が疑問に思っていた処、網走刑務所を仮
釈放になったばかりの男たちだと判った。さらに事故当日、質屋一家の殺人
事件があり、その手口からこの二人が犯人だと断定した。
 
 そして更なる共犯者に犬飼多吉(三國 連太郎)の名前が挙がった。最終
的には金を巡って大男の犬飼が、二人を殺して逃走したと思われた。
 
 その行方を弓坂刑事は追った。その捜索過程で、八重(左 幸子)という
娼妓が犬飼と接触したことを知った。だがそれ以上の足取りは掴めないまま
事件は迷宮入りした。
 
 事件から10年後、舞鶴の実業家である樽見京一(三國 連太郎)の書生が
心中した。その心中相手が八重だった。
 
 検死の結果、二人は殺害されており、容疑者として樽見京一の名前が挙が
った。容疑を裏付けるべく捜査に当ったのが舞鶴署の味村刑事(高倉 健)
だった。彼は八重の父から弓坂刑事のことを知り、弓坂元刑事に協力を依頼
した。
 
 

お勧めポイント

 飢餓を抜け出すために、必死で海峡を渡った。戻る道も帰る道もなく、生き
るためには渡るしかなかった。そこで待っていたのは、希望どおりの新天地だ
ったのか。
 
 三國連太郎さんの代表作です。モノクロの画面が重厚に物語を語ってくれま
す。時にモノクロ画面にエフェクトが掛り、その怖さを増長します。
 
 私が一番意外に思ったのが、伴淳三郎さんの役柄です。コメディー役者の第
一人者ですが、この作品でのシリアルな演技もとても素敵です。貧乏刑事で、
この事件の迷宮入りの責任をとる形で退職します。でもそんな苦労をしている
人だからこそ、犯人の犬飼の気持ちを一番判っていたと思います。
 
 この作品、犬飼が取り調べにあって、昔の事件の真相を語り始めるところか
らが醍醐味です。作品の当初、逃亡する犬飼からその人柄が、その後、彼に影
響を受けた八重の人生がヒシヒシと紹介され、彼らの人柄を理解することがで
きます。183分の大作にはそのための時間を十分に割いてあります。
 それらのことを踏まえて、真相はどうであったか、それを刑事たちはどう判
断するのか、興味深いやりとりです。
 
 弓坂刑事が犬飼と留置所で対面するシーンがありますが、そこで弓坂刑事が
犬飼に「あなたが歩んで来た道には、草も木も生えんのですか!」というセリ
フが印象に残りました。お人好しといえる犬飼ですが、その根底では人を信じ
ることが出来ず、八重は他人を見る確かな目があったのだと確信しました。
 
 「ちちんぷいぷい」という言葉、この作品でも出てくるのに驚きました。調
べてみると春日局が用いた言葉だとか、仏教の「七里結界」に由来していると
か、すごいおまじないだったのですね。
 
 本作のラストシーンは、「あっ」と驚きました。何とも言えない劇的な幕切
れです。

ポイント

笑える度 :★
ファイト度:☆☆☆
ほのぼの度:★★
スッキリ度:☆☆
感動度  :★★★★