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No.457 遥かな町へ

作品名

「遥かな町へ」 ‘10年度作品

監督

サム・ガルバルスキ

出演

  • ジョナサン・ザッカイ
  • レオ・ルグラン

あらすじ

 トマ(ジョナサン・ザッカイ)は、パリに住む漫画家だ。その日、漫画展
に出掛けたが、その帰り道、違う列車に乗ってしまった。
 
 偶然着いた駅は、生まれ育った町だった。町を出てから数十年。賑やかだ
った町は過疎化していた。ここに来たのも何かの導きと墓参りをしていくこ
とにした。その墓には最愛の母親が眠っている。トマの父親は、彼が中学生
の時に失踪していた。なぜ家を出たのか、今どうしているのか、何も分から
ないままだった。
 
 墓前で亡き母のこと、失踪した父のこと、そんなことを考えているうちに、
めまいがしてトマは倒れた。
 
 目覚めたトマは、自分の手をみて驚いた。そこにはシワひとつない自分の
手があった。街並みも昔のように活気溢れる姿に変わっていた。鏡を見ると、
そこには若かりし頃の自分が写っていた。
 
 彼はどういうわけか、昔にタイムスリップしていた。その日は父親が失踪
する数日前だった。
 
 

お勧めポイント

 もし昔に戻れるなら、と誰しも思うことがあります。今から思えば運命の時
に戻れるならどのように振る舞いますか?
 
 谷口ジローさんの原作をヨーロッパの国々で映画化されました。
 谷口ジローさんは日本の漫画家です。最近有名なものではTV放映された
「孤独のグルメ」があります。山岳や人間に関する物語には定評があります。
 
 私が好きな作品には、父の葬式で父親の意外な一面を聞かされる青年を描い
た「父の暦」、無呼吸器によるK2登頂を目指す登山家羽生丈二を描いた「神々
の山嶺(いただき)」があります。「父の暦」は、本作「遥かな町へ」にも通じ
る話です。自分の知らない、若い時には理解できなかった父親の姿を知る青年
の話です。
 
 この作品を観ながら、自分も両親のことをあまり知らないままだったことを
後悔しました。今となっては何も知ることができません。この作品を観られる
方も同様の思いに囚われると思います。
 
 大人になってから若い自分の暮らしを体験したら、どんな風に感じるでしょ
うか?おそらくその頃感じなかった思いが出てくるのではないでしょうか?
 
 父親はなぜ失踪したのか、当時の主人公には突然の出来事に何も分からずじ
まいでした。それをもう一度やり直せれる。今度は大人の思考と、これから起
こることを知って、その日を迎えることができる。私は主人公と一緒になって、
父親の失踪の理由を追いかけていました。それと私自身の人生も重なりあって
観ていました。
 
 谷口ジローさんの漫画は丁寧に描かれた人物から重厚な物語に感じていま
した。でもこの作品を観て、ストーリーの素晴らしさにも感動しました。ヨー
ロッパで谷口ジローさんの作品が紹介されたのをきっかけに、映画化が実現し
ました。日本の作品が海外で映画化されるのは珍しいですね。本作の物語終盤
で本人も登場します。
 

ポイント

笑える度 :★★
ファイト度:☆☆☆
ほのぼの度:★★★★
スッキリ度:☆☆
感動度  :★★★