配信

No.459 チャップリンの殺人狂時代

作品名

「チャップリンの殺人狂時代」 ‘47年度作品

監督

チャールズ・チャップリン

出演

  • チャールズ・チャップリン

あらすじ

 フランスに住むヘンリー・ヴェルドウ(チャールズ・チャップリン)は、
連続殺人犯である。
 
 彼は30年勤めた銀行を不況の煽りでリストラされた。妻と子供を養うにも
仕事が見つからない。それで考えたのが小金をもっている中年女性を誘惑し、
その財産を奪うことであった。さらにその女性を殺して犯行がばれないよう
にした。
 
 3年間で12人の女性が同じような状況で行方不明になっていた。これを不
審に思った警察は調査に乗り出した。だが男の写真は存在せず、友人の記憶
に頼るしかなく、なかなか捜査は進まなかった。
 
 男は船長や探検家など、ターゲットによって職業や名前を変えたのも捜査
が進まない理由の一つだった。確信に迫っていた刑事も男に殺されてしまっ
た。
 
 とうとう男の顔を知っていた人物が、レストランで男を発見した。
 
 

お勧めポイント

 「一人を殺せば悪党で、100万人だと英雄と言われる」
 
 チャップリンが監督・脚本・主演の社会風刺作品です。原作が「市民ケーン」
「第三の男」のオーソン・ウェルズですから、物語的にもよく出来ています。
 
 まずチャップリン作品と聞けば、無声映画だと思われる方も多いと思います
が、本作は音声があります。チャップリン作品でも後期のものは音声付きです。
それはチャップリンがぜひとも肉声で伝えたいメッセージがあったからです。
上に書いたセリフもその一つで有名なものです。1947年戦争直後に作られた本
作は、チャップリンの思い入れが感じられる作品です。
 
 作品の主人公は冷血非道な男ではありません。簡単に殺害をする男ですが、
毛虫を助けたり、ネコを飼っていたりします。もっともよく判るのが、無差別
に殺すのではない点です。一生懸命に生きようとしている人は、殺すのを止め
てしまいます。こういう人は、その後に幸せになっているのもチャップリンが
伝えたかったことなのでしょう。
 
 面白いのが、元銀行員という主人公が紙幣を数えるスピードです。この当時、
SFXがあるわけでもないのに、尋常でない速さで数えます。かくし芸でも使え
そうな早業です。「プロデューサーズ」では音で紙幣を数える銀行員が登場し
ますが、それにも匹敵するスゴ技です。2回登場しますから、ぜひ注目してご
覧ください。
 
 あと好きなのは、死刑執行直前にラム酒を薦められ、「ラム酒は飲んだこと
がないから飲んでみよう」と言って飲み干すのも、何かステキです。もう死ぬ
のだからと絶望しているのではなく、最後まで好奇心を失わない生き方に教え
られるものがありました。
 
 全体を通しては、やはりチャップリン作品です。笑えるシーンが随所にあり、
血が出てくるような殺人シーンはありません。レストランで主人公がケンカす
るシーンも、殴り合っているのに笑えてしまうのがさすがです。でも主人公と
女たちの会話は、ゾッとするブラックコメディなものもあります。女性たちは
殺されるなどとは思っていませんから普通に会話しているのに対して、主人公
は殺すための受け応えをしています。凄味があったのが、薄暗い階段を上がり
ながらの会話です。
 

ポイント

笑える度 :★★★★
ファイト度:☆☆☆☆
ほのぼの度:★★★★
スッキリ度:☆☆☆☆
感動度  :★★★