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No.504 ちゃんと伝える

作品名

「ちゃんと伝える」  ‘09年度作品

監督

園子温

出演

  • AKIRA
  • 伊藤 歩

あらすじ

 史郎(AKIRA)は地元タウン誌に勤めている。
 突如、父親が倒れた。父親の病気は癌で余命わずかだと聞かされた。
 
 父親は高校の教師で史郎自身にとっても恩師であった。厳格な父親から学
校では「先生」として接するように躾けられた。だがそれは私生活でも父親
と距離をとることになり、父親と接する機会が少ないまま大人になった。そ
の父親の余命を知り、出来る限り一緒に過ごしたいと感じた。
 
 余命を知らない父親は、退院したら釣りに行きたいと言った。釣り道具も
いつのまにか買っていた。父親の近況を、史郎は初めて知った。その日から
史郎も釣りに興味を抱き、恋人の陽子(伊藤 歩)と釣堀などでデートする
ようになった。
 父親と釣りに行ける日がくることを願った。
 だが史郎も癌であることが判った。しかも父親より進行していると聞かさ
れた。
 
 

お勧めポイント

 ちゃんと伝える。それは簡単なようでなかなか出来ないことです。
 
 ちゃんと伝えたかったのに、その機会を逸してしまったことは、誰にもあ
ると思います。親子や恋人、夫婦の間でちゃんと話さないといけないことが
あったのに、それを話せなかったばかりに後悔することになります。しかも
その後悔は、一生涯付きまとってしまいます。
 主人公はこのままでは後悔すると父親に接近します。でもその主人公も病
気に蝕まれていました。親より先に死ぬかもしれないということは考えたく
もありません。
 
 主人公は恋人に「おれと結婚してくれるのか?」と尋ねるシーンが4回も
あります。それに対する恋人の答えに、確かな愛情を感じました。何気なく
聞いているのか、真剣に尋ねているのか、それを考えながら答えを変える思
いやりに感謝です。ほとんど同じ会話のシーンにはビックリしてしまいまし
た。
 
 『幼獣マメシバ』に代表される佐藤二郎さんが葬儀進行役で出演されてい
ます。この人の声が、正にぴったりの雰囲気を醸し出していて、葬儀シーン
だと言うのに笑ってしまいます。
 
 ちょっと楽しくなった気分に、いよいよ感動のシーンがやってきます。火
葬場に向かった主人公が、ある看板を見てとった行動です。BGMに流れるギタ
ーの調べも心地好く涙を誘います。
 
 監督は園子温さんです。私は今、この人の作品が一番好きです。
 最初に観た「冷たい熱帯魚」で受けたショックから、「ヒミズ」「希望の
国」、そして「地獄でなぜ悪い」まで、徐々にこの監督が私の脳に浸透しまし
た(笑)。今はこの監督の作品というだけで観てしまいます。
 一番面白かったのは「愛のむきだし」です。始まって1時間ぐらいしてか
ら突如出てくるタイトル、音楽が最高でした。
 
 「ちゃんと伝える」の最後に表示される園子温監督のメッセージは、監督
のこの作品への思いがヒシヒシと伝わってきました。

ポイント

笑える度 :★
ファイト度:☆☆☆☆
ほのぼの度:★★★★
スッキリ度:☆☆
感動度  :★★★★