配信

No.511 チキンとプラム

作品名

「チキンとプラム」  ‘11年度作品

監督

マルジャン・サトラビ

出演

  • マチュー・アマルリック
  • エドゥアール・ベール

あらすじ

 音楽家ナセル・アリ(マチュー・アマルリック)は絶望した。妻のアズラ
エル(エドゥアール・ベール)が大切なバイオリンを壊してしまったから
だ。
 
 死を決意したナセルは、どんな方法で死ぬかを悩んだが、どれも苦しそう
だ。残ったのはベッドで横たわって死を待つことだった。
 
 横たわっているうちにいろんなことが浮かんできた。それに天使など色々
な者も彼の夢に登場した。その中でも彼の脳裏を占拠するのは、フランスで
の修業中に出会った美女イラーヌのことだった。
 
 一目惚れしたナセルは、イラーヌに想いを告げ彼女も同意した。だが彼女
の父親は、彼では娘を幸せに出来ないと結婚を反対した。イラーヌも父親に
逆らうことが出来ず、結局二人は別れた。
 
 イラーヌへの想いはバイオリンの音色に込められた。その日からナセルは
バイオリストとして世界を駆け巡るようになった。
 
 たまたま帰った故郷で母親に押し切られ、ナセルにずっと恋していた娘と
結婚することになった。
 
 

お勧めポイント

 運命のいたずらか、それともこれこそ運命なのか
 
 主人公は音楽家です。2人の子供にも恵まれていますが、何かが満たされな
い日々を過ごしています。奥さんもナセルを愛していますが、いつも喧嘩ば
かりです。とうとう彼の大切なバイオリンを奥さんが怒って壊してしまいま
した。それは彼にとって命の次に大切なバイオリンだったのです。それで彼
は死を決意します。その日から8日間の物語です。物語が進むとどれぐらい
大切だったかがわかります。
 
 彼や廻りの人たちの未来や過去が突如紹介されて戸惑います。全編に言え
ますが、走馬灯のようにシーンが巡っていきます。ふと現れたかと思えば、
すっと消えて次のシーンが浮かび上がります。
 中でも後半の主人公とイラーヌのその後を描いたシーン(8日目)は、壮
大な交響曲のように目と耳から刺激されます。そのシーンが余韻を残すこと
なくラストシーンへ引き継がれます。
 
 笑えるのは主人公が子供たちに何か人生の指針になる話をするシーンで
す。父親としての威厳を残そうとするのですがハプニングが起こります。ソ
クラテスもこれには勝てないです(笑)
 
 アメリカンドラマやコミック調の画面、死の天使(悪魔にしか見えませ
ん)が登場するなどファンタジックな要素が多分にあります。この天使が語
る物語は意味深いです。
 
 監督は本作が第2作になるイラン出身のマルジャン・サトラビさんです。
前作「ベルセポリス」に引き続き原作、監督です。お国事情でしょうか、イ
ラン出身の監督の作品には宗教色が強く感じます。本作も全編を観てから何
度も見直すと、人間への戒めが大人への寓話としてちりばめられています。
 
 先ほどご紹介した8日目が素晴らしいです。でもそれを十分に楽しむには
1日目からの流れをしっかりと掴んでおくことだと思います。私は8日目だ
けを何度も見ました。何度見てもいいです。涙が出てきます。
 
 この週末はどうぞこの作品をお楽しみください。

ポイント

笑える度 :★★★
ファイト度:☆☆
ほのぼの度:★★★
スッキリ度:☆☆
感動度  :★★★