作品名
「八日目の蝉」 ‘11年度作品
監督
成島 出
出演
- 井上 真央
- 永作 博美
- 小池 栄子
あらすじ
秋山恵理菜(井上 真央)は生まれてすぐに誘拐された。誘拐犯は野々宮
希和子(永作 博美)といい、恵理菜の父親と浮気していた女だった。自分
も彼の赤ちゃんを授かったが中絶し、その衝動から恵理菜を誘拐してしまっ
たのだ。
警察は行方を捜したが、希和子は東京を離れ、地方で暮らした。誰にも怪
しまれることなきようにひっそりと。子供の名前も自分の子供の為に考えた
名前である薫として育てた。
4年が経った頃、とうとう警察に居場所を発見されてしまった。薫は恵理菜
に戻り実の親の元に戻った。だが薫が物心付いた時には、希和子が母親であ
り、希和子と暮らした生活こそ自分の全てだった。実の親は見知らぬ大人に
しか感じなかった。親とは疎遠であったが恵里菜は成長した。
恵里菜は大学生になった頃には、事件は世間の記憶から消えたように思え
た。そんなある日、安藤(小池 栄子)という女性が現れた。恵里菜に事件
の取材をしたいと告げた。
その直後、不倫している男性の子供を恵里菜は妊娠していると気付いた。
お勧めポイント
蝉は地上に出て七日の命。でも八日目を迎えた蝉がいたなら、どんな生き
方をするのでしょうか?
誘拐した女性にも正妻にも悲惨な運命が待ち受けています。でも一番過酷
なのが誘拐された子供自身です。本当の自分の家なのに、知らない男女に誘
拐されたと交番に駆け込むのも理解できます。寝る前の子守歌も自分が好き
な曲ではない。自分に懐かないことでヒステリックに叫ぶ母親に謝る光景も
悲惨としか言いようがありません。
こんな悲惨な生い立ちは想像したこともありません。『そして父になる』で
も病院の取り違いで実の親と違う家で育つことになる2組の家族が題材にさ
れています。“産みの親より育ての親”といいますが、どうなのでしょうか。
蝉はみんな七日で死にます。自分だけが八日目を迎えたら周りにいるのは
自分の知らない蝉ばかり。世界に一人きりの最後の1日を迎えることにな
る。考えようによっては、誰も知らない八日目を過ごせる幸運な蝉かもしれ
ません。
子供は親を見て育つという言葉通り、主人公の恵里菜(薫)も家庭をもつ
男が好きになります。その男が言うセリフが自分の父親の時と全く同じで
す。こういう類の男はみんな似ているのでしょうか。そういう立場になって
初めて、誘拐犯で育ての親だった希和子の気持ちを理解できるようになりま
す。
自分探しの旅へ、誘拐犯と暮らした4年間の足跡を、安藤と共に巡ること
になります。実は主人公の恵里菜よりも酷いトラウマをもっているのが安藤
です。みんな多かれ少なかれトラウマはあります。
忘れた記憶もその場所に立てば、昨日のことのように思い出すのは自分も
経験したことがあります。あの頃どうしていたのかなどと考えるには、その
場所に立ち戻るのも一つの方法ですね。
『星の歌』で思い出す曲は何ですか?主人公が希和子から聞かされた曲は
哀愁漂う名曲です。これも人によって思す曲は違います。先ほどの場所と同
じく、歌というのもその頃にかんたんに戻れる方法です。
ラスト近くにフェリー乗り場で希和子が薫を思って叫ぶ言葉に、涙が出て
しまいました。この人は本当に子供のことを、薫のことを愛しているのだと
思います。
この作品が今週末にBSで放映されます。テレビでもレンタルでもご都合
の良い方法で、どうぞこの作品を楽しんでください。
ポイント
笑える度 :★
ファイト度:☆☆☆
ほのぼの度:★★
スッキリ度:☆☆
感動度 :★★★★


