作品名
「大江山酒天童子」 ‘60年度作品
監督
田中 徳三
出演
- 長谷川 一夫
- 市川 雷蔵
- 勝 新太郎
- 山本 富士子
あらすじ
平安末期、藤原道長が関白の時代であった。藤原氏の私利私欲で市政は乱
れていた。町には盗賊や物の怪の類が幾度となく出没した。
源頼光(市川 雷蔵)は妻(山本 富士子)をめとることになった。源頼
光は都の治安を任された第一人者であり、妻は藤原氏からの縁組であった。
だがそれには理由があった。
妻を迎え入れる際に物の怪が乱入した。手下の渡辺綱(勝 新太郎)が見
事に物の怪の手を切り落としたがその三日後、物の怪にその手を奪われてし
まった。
かねてより大江山に酒天童子(長谷川 一夫)と呼ばれる鬼が住んでいる
と噂されていた。何度か偵察を送ったが誰一人帰って来ず、その実態を把握
出来なかった。
この酒天童子が悪の根源だと思った源頼光は、部下の四天王たちと大江山
に攻め入ることを決意した。酒天童子たちも決戦を待ち受けていた。
お勧めポイント
思いはいつか判るときがくる
妖怪が登場する大映特撮作品です。そして大映のオールキャスト出演も見
所です。長谷川一夫さん、市川雷蔵さん、勝新太郎さん、本郷功次郎さん、
山本富士子さん、中村鴈治郎さん、左幸子さん、中村玉緒さんなど蒼々たる
役者さんが登場します。
中でも元ミス日本の山本富士子さんや中村玉緒さんの美しさは見とれてし
まいます。また「飢餓海峡」の印象が強かった左幸子さんもその美しさを改
めて知りました。本作では鬼役ですが、それでも特筆すべき美しさです。
物語は酒天童子の野望を源頼光が阻止するものです。酒天童子が藤原氏に
恨みをもつのは、藤原氏に妻を奪われたからでした。妻に裏切られたと思っ
た時から世捨て人になり酒天童子と呼ばれる鬼になったのです。しかし妻は
酒天童子となった夫を愛し続けていました。この辺りの展開が私は一番気に
なりました。登場する女性がみんな誰かを思い続けているのも哀愁が漂いま
す。涙さえ出ます。一番の見どころです。
酒天童子も藤原氏に恨みがあっても市政を正すのが本懐です。民衆のため
に働く権力者を斬った者は仲間であっても容赦しません。源頼光も酒天童子
も清い世を作りたい気持ちは同じです。でも今まさにこの二つのグループが
直接対決に臨みます。果たしてどのような結末が待ち受けているのでしょう
か。
源頼光の手下に坂田金時がいます。そうです“金太郎”です。本作でもマ
サカリを振り回して暴れます(笑)
長谷川一夫さんの眼力をマジマジと知りました。こんな眼で見られたら、
誰でも蛇に睨まれたカエルのようになってしまいます。スクリーンを通して
もすさまじいですから、対面したら私などは硬直ことでしょう。
市川雷蔵さんと言えば「眠狂四郎シリーズ」を真っ先に思い出します。そ
れ以外には「薄桜記」や「大殺陣 雄呂血」が私は好きです。お侍姿がよく
似合います。また歯切れの良い声が潔白な正義感あふれる主人公を醸し出し
ます。映画デビュー60周年ということで色々なイベントが開催されていま
す。本作もネットで無料鑑賞(期間限定)できます。
秋も深まってきました。思い続ける女性とそれを理解してやれなかった男
の哀愁を描いた本作をじっくりと楽しんでください。
ポイント
笑える度 :★★
ファイト度:☆☆☆
ほのぼの度:★★★
スッキリ度:☆☆☆☆
感動度 :★★★


