作品名
「少女は自転車にのって」 ‘12年度作品
監督
ハイファ・アル=マンスール
出演
- ワアド・ムハンマド
- リーム・アブドゥラ
あらすじ
サウジアラビアの首都リヤドに住む少女ワジダ(ワアド・ムハンマド)は
大人しいが、言いたいことは相手にズケズケ言う子だった。
学校は男女別だったがワジダは近所の男の子と平気で接していた。ワジダ
はその男の子が持っている自転車が欲しくてしかたがなかった。でも自転車
は高く、とてもワジダには買えないものでした。母親(リーム・アブドゥ
ラ)におねだりしても、女の子は自転車にのってはいけないという宗教的理
由から、まともに取り合ってくれなかった。
ミサンガを作っては友達に売りつけたり、先輩のラブレターの受け渡しを
手伝ったりしてお金を貯めるが、自転車を買うには程遠い状態だった。
ちょうど学校でコーランの大会が開催されることになった。コーランをど
れだけ覚えているかを競うコンテストだ。これに優勝すれば自転車を買える
賞金がプレゼントされる。
自転車を買うにはこれしかないと思ったワジダは、今までまったく覚えよ
うとしなかったコーランを必死で覚え始めた。
お勧めポイント
サウジアラビアの新鋭女性監督ハイファ・アル=マンスールさんの長編デ
ビュー作です。サウジアラビア初の女性監督です。この国の女性からの視点
で描いたのが本作です。
まず主人公のワジダはキュートな女の子です。話が進むにつれて、ワジダ
を見守っていたくなります。
サウジアラビアという国を知る作品です。私たちにあまり縁のない宗派だ
けに、各人のセリフでどういうことが禁止されているのか初めて知るものが
多いです。特に校長先生は厳しいことを言います。でも校長先生も自宅に男
を連れ込んだと噂されているように、現実の表と裏が判りました。
Makingで一番大変だったのが、映画撮影に関する取り締まりではなく、エ
キストラの女の子たちをまとめることだったと聞いて笑いました。子供たち
が撮影待ちの時間にいなくなったり、スタッフに教室での待機が退屈だから
表に出たいと掛け合ったりしていました。Makingを見るだけで本当に大変
だ、と思いました(笑)素のワジダを見られるのもうれしいです。
母親はタンスに大金を隠してあっても、ワジダに自転車を買ってあげる素
振りはなく、宗教的理由から無理なのかと思っていました。でも別の理由が
あったことを物語の後半で知りました。母親のヘソクリを知りながら、それ
を盗むことなく自分で貯めようとするワジダには涙しました。普通なら使っ
てしまいそうですが、ワジダは決してそのようなことはしませんでした。母
親を心から愛しているのですね。
ラストシーンが大好きです。私には『小さな恋のメロディ』の再来に思え
ました。自転車を一生懸命に漕ぐ主人公の行き先を大通りが遮っています。
でもそれが見えないかのように進む主人公は、この国の現在の女性を表して
いるようでした。なんとか自力で漕ぐことが出来るようになったが、まだま
だその行く手には難関が待ち受けている。でも大通りで立ち止まった主人公
の顔がそれに対する気持ちを表現していたと思います。
笑ってしまったのが、ここでも“中国製”なら安いという表現が出てくる
ところです。日本だけでなく全世界共通なのですね。また、男の子の自転車
で転倒してヒザから血が出たワジタに母親が掛ける言葉がスゴイです。思わ
ずツッコミの言葉を言ってしまいました(爆)
他の生徒たちが黒一色の飾り気のない靴を履く中、コンバースと思われる
靴を履くワジタを、きっと応援したくなると思います。ラストは泣けます。
この週末はぜひこの作品をご覧ください。
ポイント
笑える度 :★★★★
ファイト度:☆☆☆☆
ほのぼの度:★★★★
スッキリ度:☆☆☆☆☆
感動度 :★★★


