No.560 リトル・フォレスト｜メンタルシネマクラブ

作品名

「リトル・フォレスト」　‘14・15年度作品

監督

森　淳一

出演

橋本　愛
三浦　貴大

あらすじ

　いち子（橋本　愛）は、同棲していた男性と別れ、逃げるように生まれ育
った東北の小森（こもり）へ戻った。生まれ育った村とはいえ、そこにいち
子の親はいない。母親はいち子を残して男と出て行ったまま、気まぐれに手
紙が届くぐらいだ。
　
　村人は家族と呼べるほど温かくいち子と接してくれた。とりわけ幼馴染の
ユウ太（三浦　貴大）は何かと便宜を図ってくれた。力仕事がある時には何
も言わずに手伝ってくれた。
　
　その代わりにいち子は田んぼや森で採れた自然の食材を元にした料理をご
ちそうした。それはいち子の母親譲りの才能であった。食材を見るとどのよ
うに料理すれば良いかを考えるのも楽しみであった。幼き頃に母親が作って
くれた数々の料理をいち子は覚えていて、自分でも作れるようになっていた
のだ。
　
　小森の四季は変化に富んでいる。春は食べる糧を準備し、夏はそれが実る
ように育て、秋は収穫し、冬は翌年に備えて積雪を耐える。
　
　大自然と共に生きることでいち子は癒されていった。
　
　

お勧めポイント

　『自給自足』
　
　小森の四季を主人公が作る数々の料理と共に展開するドキュメンタリー風
の作品です。春・夏・秋・冬の4部構成からなる物語です。そのどれもがその
時期に相応しい料理と共に紹介されていきます。それぞれの部にエンドロー
ルがあり独立しています。映画館やDVDでは『春・夏』と『秋・冬』の2回（
枚）に分けて公開されました。
　
　『春』⇒『夏』⇒『秋』⇒『冬』の順に進んでいきますが、どこから観て
も楽しめる作品です。もっとも『冬』だけは最終章なので、最後に観られた
方が良いかと思います。私はこの作品を観て、ヴィヴァルディの『四季』を
思い浮かべました。この曲も4楽章で構成され、どれから聞いてもそれぞれの
季節を感じることができました。本作もどの部から観ても主人公が自然と対
面して必死に生きる姿が描かれています。
　
　環境音楽のような軽やかなギターのメロディと主人公の橋本愛さんの独り
言のような語り口に、ボーっと観ているだけで癒されます。作る料理はどれ
も美味しそうでお腹が減って困ります（汗）軽食かおやつを用意して観られ
た方が良いかなと思います（笑）
　
　この作品のキャッチフレーズに『生きるために食べる。食べるためにつく
る』とあります。都会に暮らすと食べることが何と簡略化されているのか、
他力化されているのかと、この作品で反省しました。食材やその食材を自分
の元に届けるまで苦労された人々への感謝を忘れてはいけません。
　
　主人公は都会で暮らしたことがあります。他人のことを理解しているつも
りでいましたが、それは表面上だけでした。それを小森に戻って気づきます
。小森に住む人々や森は、ここで必死に生きていると感じたからです。そし
て母親に対しても自分はどのように接していたのかを考えるようになりまし
た。
　
　夏はどこかへお出かけしたくなります。大自然の中に飛び込みたいと思う
こともよくあります。家で手軽に、しかも四季を感じることが出来る本作を
、この週末にどうぞお楽しみください。
　各部1時間程度で、全部で約4時間の大作です。