No.575 福福荘の福ちゃん｜メンタルシネマクラブ

作品名

「福福荘の福ちゃん」　‘14年度作品

監督

藤田　容介

出演

大島　美幸
水川　あさみ

あらすじ

　福田辰男（大島　美幸）は内装職人だ。彼は仲間をうまく束ねる気の良い
男だ。ちょっと生真面目過ぎるのが難点だが、みんなの人気者であるのは間
違いない。皆、彼のことを「福ちゃん」と呼ぶ。
　
　ある日、中学の同級生だった杉浦千穂（水川　あさみ）が福ちゃんの元に
いきなり現れた。千穂は自分の運勢が悪いのは、昔、福ちゃんにやったイタ
ズラの天罰だと占い師に聞かされ、それを謝りに来たという。
　
　千穂は福ちゃんの初恋の人だ。でも千穂が優しくしてくれたのは全てクラ
スメイトと仕組んだイタズラだった。それを知った福ちゃんは女性恐怖症に
なり、それ以来、恋愛と縁を絶っていたのだ。
　
　最初は戸惑い拒否した福ちゃんだったが、そこは気の良い福ちゃんだ、千
穂のことを優しく許した。その笑顔を見た千穂は、福ちゃんの写真を撮らせ
て欲しいと頼み込んだ。千穂の夢はプロの写真家になることだった。
　
　

お勧めポイント

　本当に傷ついたからこそ、人に優しくなれる
　
　森三中の大島美幸さん主演のハートフルヒューマンドラマです。
　あらすじから何か変だと思ったかもしれません。大島さんは女性なのに、
主人公は男です。作品を観たら分かりますが、こんなおっさん、あちらこち
らにいる気がします（笑）それほどピッタリなのです。声質もちょっと低め
にゆっくりと話されますが、これぐらいの声の高さのおっさんもいます。
　
　この作品には何かに傷ついた人が多数登場します。何かのトラウマに悩ん
でいる人たちです。でもそのトラウマと向き合い必死に乗り越えようとする
姿は優しく見守ってあげたくなります。誰でも多少のトラウマを抱えている
ものです。
　
　笑い顔しかなかった福ちゃんがあまりの口惜しさに泣き出すシーンがあり
ます。それは勘違いだったのですが、どんなに悔しく思ったかと考えると一
緒に泣きたくなります。それほどトラウマが大きかったのでしょう。
　
　物語は大きな事件もなく進んでいきます。ゆったりとした時の流れを感じ
られる作品です。でも最後にはなかなか体験できないようなドラマもありま
す。そこでも福ちゃんらしさに溢れていて、ここまで観てきた人たちは、「
やっぱり福ちゃんだね」と言いたくなります。
　
　笑えるのは主人公たちがカレーを食べに行くシーンです。こんなこだわり
のカレー屋があったら大変です。存在しないことを希望します。
　
　劇中で流れるあの曲、とても懐かしいです。イントロのギターフレーズで
、この曲しかないと思いながら、まさかこんなナツメロが流れるとはインド
人もびっくりです！さてイントロで判りますでしょうか？
　
　監督の藤田容介さんは、この作品の前作ともいえる「全然大丈夫」の監督
でもあります。本作のゆるさが気に入った人は「全然大丈夫」もご覧くださ
い。「福福荘の福ちゃん」で主人公の親友役で登場する荒川良々さんが「全
然大丈夫」では主役を務めています。
　
　本作ではおっさんに成り切った大島さんが丸坊主で登場します。女性の命
とも言える髪を切った大島さんの熱演を、どうぞこの週末に楽しんでくださ
い。