作品名
「お茶漬けの味」 ‘52年度作品
監督
小津 安二郎
出演
- 佐分利 信
- 木暮 実千代
- 津島 恵子
- 鶴田 浩二
あらすじ
昭和初期の東京、佐竹茂吉(佐分利 信)は妻妙子(木暮 実千代)と結婚して数年が過ぎていた。東京の上流階級に育った妙子と信州の田舎育ちの茂吉は、何かにつけて趣味嗜好が合わなかった。
最近はお互いの友人と遊ぶことが多く、ほとんど会話することも、一緒に食卓に座ることもなくなってしまった。
妙子の実兄の娘である節子(津島 恵子)に縁談話が持ち上がった。顔合わせに同席することになった妙子だったが、肝心の節子はすぐにお見合いから逃げ出した。
そのことを叱責してもらおうと茂吉に頼んだ妙子だったが、茂吉は叱責するふりだけだった。実は節子は茂吉とその友人のんちゃん(鶴田 浩二)が出掛けた競輪場に同行していたのだった。
それを知った妙子は激怒し、家を飛び出て神戸の親戚の家へ行ってしまった。ちょうどその日、茂吉は海外出張を伝えられた。以前から話は出ていたのだが、そのことを妙子に伝える機会を無くしていたのだった。すぐに電報を出したが、飛行機の出発時間に妙子の姿はなかった。
お勧めポイント
小津安二郎監督の人間ドラマです。
淡々と描かれる日常生活、主人公夫婦やその周りの人たちの暮らしぶりを粛々と描かれています。急な用事は電報という、ゆったりした時間の流れを感じながら、物語は続いていきます。ここで登場する色々な出来事、会話がラスト20分で、一気に絡み合い、加速します。
主人公の茂吉の部屋は和室なのに対して、妙子は洋室に暮らしています。この辺りだけでも二人の趣向が違うのが良く分かります。さらにこの作品のタイトルになっている「お茶漬けの味」ですが、妙子はお茶漬けを庶民の食べ物だと忌み嫌っています。でもラストでお茶漬けを食卓を囲んで食べるシーンは、夫婦って良いもんだと涙が出てます。
共演に淡島千景さんや老人役しか見たことがなかった笠智衆さんが登場します。主演の木暮実千代さんや佐分利伸さんもこんなに若かりし頃の主演作品を観たのは初めてだと思います。ラストの木暮さんの演技は、女心がヒシヒシと伝わってきます。前半とまるで違う艶やかさを感じます。
面白いセリフに、「男は家ではノロマな亀のようにしか見えないが、表では甲羅干しをしたり、浦島太郎を乗せたり、いろんな面がある」と言うのが笑えます。家や職場ではその一面しか見えていないというのは男女共、一緒かと思います。
52年製作だけに映像や音が劣化しているシーンがありますが、最近デジタルリマスター版が登場しました。出来ればこちらを楽しまれた方が良いと思います。それでもノイズが気になるシーンもあります。
男と女って、ちょっとしたきっかけで近づいたり離れたりと、本当に難しいですね。最後最後の鶴田浩二さんも微笑ましいです。
どうぞこの週末はこの作品を楽しんでください。
きっとお茶漬けを食べたくなると思います。見終わった直後に食べてください。
ポイント
笑える度 ★★★
ファイト度 ☆☆☆
ほのぼの度 ★★★★★
スッキリ度 ☆☆☆☆
感動度 ★★★★


