作品名
「大人の見る絵本 生れてはみたけれど」 ‘32年度作品
監督
小津 安二郎
出演
- 斎藤 達雄
- 菅原 秀雄
- 突貫 小僧
あらすじ
麻布から東京郊外に引っ越してきたのはサラリーマンの吉井さん一家だっ
た。父親(斎藤 達雄)と母親、それに小学生の長男(菅原 秀雄)と次男
(突貫 小僧)の4人暮らしだ。
父親は引っ越しするなり専務の家に挨拶に出かけた。専務の岩崎さんに付
け届けをしてへらへらと愛想よく振る舞った。そうすることで吉井は課長に
昇進したのだ。専務の家の近所に引っ越したのもそのせいだったようだ。
長男と次男は引っ越し早々にガキ大将の亀吉に絡まれた。まず次男が泣か
され、それを助けに長男も加勢したが、腕力で敵う相手ではなかった。おま
けにガキ大将グループには岩崎さんの子供もいた。
学校に行きたくない二人は学校をサボった。しかし学校に行ってないこと
を父親が知り、強制的に学校に連れて行かれた。
ガキ大将の件は次男が頭を使って黙らせることに成功した。そしてガキ大
将のグループと一緒に行動するようになった。
お勧めポイント
サラリーマン家族は昔も今も
小津安二郎監督の無声映画です。前提知識なしで観たもので、音が出ない
のは何かのトラブルかと焦ってしまいました(笑)サイレントだと91分は非
常に長く感じました。でも物語が進むにつれて展開に引き込まれてしまいま
した。たまに出る字幕よりもそれぞれの表情がそれ以上のことを伝えてくれ
ます。
まず、子供の社会ってどんなのだったでしょうか?どんな規律があって、
どんな遊びに夢中になっていたのでしょうか?この作品を観て、そういえば
こんな他愛もないことで遊んでいたのだと思い出しました。いつのまにか忘
れていました。物語の前半は子供社会を楽しませてくれます。
そして物語の後半は、“大人の見る絵本”という題名どおり大人へのメッセ
ージが込められた大人社会が描かれています。昔も今もサラリーマン事情は
変わらないのですね。大人の立場で観てしまいますから、ついついこの後半
は自分のことのように心を痛めてしまいます。そして絵本のように何かを教
えてくれます。
泣かされた子供の親が怒鳴り込んできたことから、子供たちの関心は、誰
の親が強いかに移ります。そうしておいてから大人社会を描き始める展開が
素晴らしいです。
“生れてはみたけれど”子供たちはそんなことを考えることもなく、毎日
を一生懸命過ごしています。この課題は大人になってからもずっと続く、い
え大人になるほど気になるのかなと思います。
ラストが良いです。大人社会を少し理解して成長した子供たちと、大人社
会とは無関係に子供社会で友好を深める子供たちの姿に感動します。
子供たちの流行って本当にすごいですね。どこでこんなことを覚えてきた
のでしょうか?(笑)シマウマは白地に黒縞なのか、黒地に白縞なのか、ど
っちだと思いますか(笑)
秋の夜長はぜひこの作品を楽しんでください。
ポイント
笑える度 :★★★
ファイト度:☆☆☆☆
ほのぼの度:★★★★★
スッキリ度:☆☆
感動度 :★★★


