配信

No.524 もらとりあむタマ子

作品名

「もらとりあむタマ子」  ‘13年度作品

監督

山下 敦弘

出演

  • 前田 敦子
  • 康 すおん

あらすじ

 春、坂井タマ子(前田 敦子)は大学を卒業して甲府に戻ってきた。父
(康 すおん)が住んでいる実家だ。父はタマ子の母親と離婚し、一人でス
ポーツ店を経営している。タマ子は日々何をするでもなく、着の身着のまま
過ごした。そんなタマ子に父は一言も文句をいわなかった。
 
 その夏、テレビのニュースを見るたび言うタマ子の口癖は「だめだな日本
は」だった。自分のことを棚に上げてつぶやくタマ子を、父親は呆れてみて
いた。
 
 その秋、とうとう父親がダラダラした生活をするタマ子にキレた。だが逆
ギレしたタマ子に父親も閉口した。
 
 その冬、周りの人の生活をみてタマ子も何かが変わろうとしていた。
 
 その次の春、突如タマ子は履歴書を書き始めた。服を買ってくれとせがむ
タマ子に、父もやっとその時がきたと喜んだ。
 
 タマ子が目指したのはアイドルだった。それでも父はタマ子を見守った。
だが父や周りの人に自分がやろうとしていることがバレたタマ子は、やる気
を失った。
 
 その次の夏、父親に再婚話が持ち上がった。どんな女性か気になったタマ
子はその女性を調査し始めた。
 
 

お勧めポイント

 こんな時代もあります
 
 Wikipediaによると“モラトリアム”とは“学生など社会に出て一人前の人
間となる事を猶予されている状態”とあります。
 主人公のタマ子は23歳になりますがプー太郎生活をしています。炊事、洗
濯、食事など父親に任せきりです。
 
 主演は元AKBの前田敦子さんです。まず見て驚かれると思うのが、「これは
素の前田敦子さんでは?」ということです。非常にナチュラルで、およそ演
技と思えないほどしっくりきます。私の場合は好感度が上がりました。アイ
ドル路線ではなく女優としての確かな一歩に思えます。
 
 父親役の康すおんさんとも息ぴったりと思えました。タマ子の言動に対し
て見せる表情には色々な思いが見え隠れします。密かに撮影したアイドル応
募用写真へのリアクションは、その後その写真を見て、父親のリアクション
の意味することを知り笑ってしまいました。
 
 タマ子は今のままで良いと思っているわけではありません。このままでは
いけないという気持ちが言動の端々で感じられます。きっかけがあれば、背
中を押してもらえたら、変われるのです。その準備期間が“モラトリアム”
期間なのでしょう。
 
 タマ子親子はよく会話します。タマ子は自分の部屋ではなく茶の間でごろ
ごろしていることが多いのも、今時珍しく良好な親子関係です。ほのぼのと
した親子愛を全編で感じます。初めての春から2年目の夏へ、タマ子の行動
が変化するのを実感できます。
 
 夏の終わりのこの時期によく合う作品です。夏休みの宿題がまだ終わって
いないのに夏は過ぎ去ろうとしている気分を思い出しました。
 
 今週はこの作品で過ぎゆく夏を楽しんでください。

ポイント

笑える度 :★★★★
ファイト度:☆☆☆
ほのぼの度:★★★★★
スッキリ度:☆☆☆
感動度  :★★