配信

No.495 鍵泥棒のメソッド

作品名

「鍵泥棒のメソッド」     ‘12年度作品

監督

内田 けんじ

出演

  • 堺 雅人
  • 香川 照之
  • 広末 涼子

あらすじ

 売れない役者の桜井(堺 雅人)は、将来を悲観し自殺を考えた。だがそ
の前に銭湯に行ってさっぱりすることにした。
 
 銭湯の脱衣場で隣り合わせたのは、殺し屋のコンドウ(香川 照之)だっ
た。そんなことは全く知らない桜井だが、コンドウの分厚い財布が目に留ま
った。
 
 石鹸で滑り転倒したコンドウは、意識不明のまま病院に搬送された。誰も
気づいていないことを良い事に、桜井はコンドウの脱衣場の鍵をすり替え
て、コンドウの服を着て立ち去った。もちろん、分厚い財布を懐に隠して
だ。
 
 怪我は大したことがなかったが、コンドウは記憶喪失になっていた。所持
品から彼は桜井だと確認された。コンドウ自身も桜井という売れない役者で
金銭に不自由な生活をしていると信じた。そんなコンドウに興味をもって近
づいたのは、理由あって結婚に焦っている水嶋(広末 涼子)だった。
 
 一方の桜井はコンドウとして優雅な生活をし始めた。
 だがコンドウへの電話で愕然とした。殺しの依頼だったからだ。
 
 

お勧めポイント

 他人の生活はよく見える
 
 殺し屋と売れない役者が入れ替わります。売れない役者の方は、自分で選
択したのだから、あまり不満はないはずです。でも殺し屋だと知っていた
ら、選択しなかったでしょうが(笑)。もう一方の殺し屋は記憶喪失ですか
ら、不平を言えることもなく生きていくしかありません。
 
 ここで面白いのが売れない役者は優雅な生活になっても楽しそうに見えま
せん。いつも暗い表情をしています。殺し屋の方は元来真面目な性格で、現
状の把握から始めて、いかに生活向上を計るかを考えます。役者としても努
力します。そんなところに水嶋は惚れるのです。
 
 意外と他人の生活でも順応できてしまうのが人間でしょうか。自分の生活
はこれしかないと思い込んでいるのがそもそもの間違いでしょうか。もし1
日だけ、朝目覚めて夜眠るまで他人の生活をしてみれば、自分の良い所も悪
い所もよく判る気がします。
 
 本作では他人の趣向を自分の趣向だと誤解して受け入れようとする姿が数
多く観られます。例えば、タバコの匂いすら嫌いなのに、愛好品だと思って
タバコを吸って噎せ返ります。趣向はその物への拘り以上に、それにまつわ
る思い出が影響するのでしょうか。
 
 内田けんじ監督といえば、『普通じゃない人』『アフタースクール』が有
名です。どの作品でも出演者たちの行動がオーバラップして描かれていま
す。特に『普通じゃない人』では3人の出演者の行動が順に展開され、その
すべてを見終わって時系列を整理して初めて、全貌が理解できる作りになっ
ています。本作ではその脚色が主人公たち自身の生活を入れ替えることで表
現されています。
 
 ラストシーンが心地よいです。他人の生活という日常では有り得ない体験
をすることで、ワンランク成長した姿に嬉しくなってしまいます。胸がとき
めきました(笑)

ポイント

笑える度 :★★★
ファイト度:☆☆☆☆
ほのぼの度:★★★★
スッキリ度:☆☆☆☆
感動度  :★★★