作品名
「生きたい」 ’99年度作品
監督
新藤 兼人
出演
- 三國 連太郎
- 大竹 しのぶ
あらすじ
70歳を迎えた安吉(三國 連太郎)は、少々呆けてきた。気づかないうち
に失禁することが増え、常連のスナックでも嫌われる存在になっていた。
しかし、それは内臓の病気のせいだと医者は言った。施設に入所することを
医者は薦めた。
安吉には自分の老後以外に気になることがあった。それは娘の徳子(大竹
しのぶ)のことである。他の子供たちは早々に安吉を見捨てて独立した。しか
し、徳子だけは、自分が婚期を逃したのも、うつ病になったのも、すべて安吉
のせいだと言って、安吉と同居していた。安吉が何か問題を起こすたびに、徳
子が対応に奔走していた。
病院で見つけた『姥捨て山』の本を、安吉は読み始めた。それには年老いた
母親を山に捨てに行く話が綴られていた。
安吉は自分の家で死にたいと思っていたが、これ以上徳子に迷惑をかけては
ならないと介護施設に入ることを決意した。
お勧めポイント
2012年死去された新藤兼人監督のヒューマンドラマです。
物語は、現代の高齢化問題と、姥捨て山の伝説の話が交互に進んでいきます。
現代はカラーで、伝説部分はモノクロで表わされていますので、話を混同す
ることはありません。でもいきなりカラーに変わったりすると、これは何なん
だろうと、自分はボケたかと(笑)、驚くこともありました。
主演は三國連太郎さんです。この人の老人ぶりは、どこにでもいそうな感じ
で、親近感があります。自分の親に置き換えてついつい考えてしまいます。
娘役の大竹しのぶさんですが、この人、こういう人物をやらせたら、本当に
うまいですね。『ふくろう』や『黒い家』でも、すごい役者だと思いましたが、
この作品でも大竹しのぶさんの好演が光っています。
躁、鬱の状態の違いを見事に演じ分けているので、とても参考になります。
もう一つの物語である『姥捨て山』の伝説ですが、こちらは見ていて本当に
悲しくなります。特に感動したのが、姥捨て山に母親を背負っていった息子が、
夕闇で帰り道が判らないと言うシーンです。その時、母親は要所になる木の枝
を折ったと息子に告げます。最後まで子供のことを思っている親の気持ちがヒ
シヒシと伝わってきます。涙無くして見られないシーンです。
さて、この作品、最後はどうなるのでしょうか?ここでも大竹しのぶさんの
演技が光っています。また、親子の情がよく判って涙が出てきます。結末は、
ご自分で観て感じ取ってください。
テーマからすると、とても暗い物語と思われるかもしれません。でも、なる
ほどと感心したり、思わず笑ってしまったり、とても見やすい作品です。つい
つい引き込まれて、この先どうなるのだろうかと見守ってしまいます。そして
感動する良い話でもあります。
大森南朋さんの大学生役も必見です。
ポイント
笑える度 :★★★
ファイト度:☆☆☆
ほのぼの度:★★
スッキリ度:☆
感動度 :★★★★


