配信

No.274 東京物語

作品名

「東京物語」’53年度作品

監督

小津 安二郎

出演

  • 笠 智衆
  • 東山 千栄子
  • 原 節子

あらすじ

 年老いた平山 周吉(笠 智衆)と妻とみ(東山 千栄子)は、尾道から
20年ぶりに東京へ出掛けた。久しぶりに子供たちに会いに来たのだった。
三男は大阪に住んでいて、そこに立ち寄った後、東京には長男一家、長女、
そして次男の嫁紀子(原 節子)が住んでいた。次男は戦死したのだった。
 子供たちは快く周吉たちを出迎え、熱海の旅館へと招待してくれた。楽し
い日々はすぐに過ぎた。しかし周吉たちは帰る気配もなく、東京に留まって
いた。最初は歓迎していた子供たちも、それぞれの生活に必死で、両親たち
の相手をしている暇はなかった。ただ一人、紀子だけは、周吉夫婦を東京見
物へと連れ歩いた。

お勧めポイント

 日本を代表する小津安二郎監督の一作です。
 久しぶりに我が子たちの生活ぶりを見に来た周吉たちに、最後まで優しく
接してくれたのは、実の子供ではなく、息子の嫁だったという在りがちな話
です。この映画に登場する周吉の嫁とみは、子供たちが立派に生活している
のをその目で見た後、帰りの汽車で体調を崩し、自宅へ帰りつくや亡くなっ
てしまいます。子供とは取り返しのつかない状況になって初めて、後悔をす
るものだとシミジミと感じました。

 主演の笠智衆さんといえば、寅さんシリーズの御前様で有名です。日本の
お祖父ちゃんと言えば、この人を思い浮かべる人も多いと思います。この人
と小津監督は別にしては話せないほど、小津映画に無くてはならない存在で
す。この映画のラストシーンで、座布団に座り、団扇を手に、妻に先立たれ
た余韻に浸っている後姿が、これ以上の哀愁を感じる姿があるかと思うほど
素晴らしいです。小津監督から長時間にわたって、このシーンに注文をつけ
られ、OKが出た後には、座布団から湯気が立ち上がっていたそうです。ま
た、ある映画で、役柄とはいえ男泣きするのは九州男児には出来ないと嘆願
し、小津監督からどやされたことも有名です。

 東京といえば浅草、新宿、銀座というところを脳裏に浮かびますが、この
作品では主人公たちが降り立つ駅は、八広駅(旧荒川駅)という東京下町で
す。これも小津監督のこだわりでしょうね。

 特に鮮やかな場面も出てこないのですが、その分、どこにでもありそうな、
みんなが何気なく過ごしている、そんな日常に、問いかける一作です。
 ほのぼのとした場面の中にも、どこか考えさせられるストーリがちりばめ
られています。

ポイント

笑える度 :★★
ファイト度:☆☆☆
ほのぼの度:★★★★★
スッキリ度:☆☆☆
感動度  :★★★★