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No.133 ひとごろし

作品名

「ひとごろし」’76年度作品

監督

大洲 斉

出演

  • 松田 優作
  • 丹波 哲郎

あらすじ

 越前福井藩に昂軒「こうけん」という剣豪がいた。武芸こそが立身出世に欠
かせないと信じて疑わない男であった。彼の指南は常軌を逸しており、藩内の
武士から恨みをかっていた。ある夜、闇討ちに遭うが見事に返り討ちにする。
ところが切り殺した武士の中に、藩主が可愛がっていた小姓も含まれていた。
昂軒(丹波 哲郎)は行く先を告げて藩を去る。自分は正しい行動を取ったと
信じていたからと藩への抗議を込めてである。一方、藩主の怒りは収まらず、
「上意討ち」の命令を下す。ところが昂軒が相手ということで誰一人として名
乗りを挙げない。
 福井藩には双子六兵衛(松田 優作)なる小心者の武士がいた。唸る犬にさ
えも道を譲る男であった。六兵衛には妹がいたが、六兵衛のおかげで縁談の話
もなく、肩身の狭い暮らしをしていた。その六兵衛が上意討ちの話を聞いて、
妹の為に決意する。藩内の誰もが六兵衛ではと思う反面、これ幸いと六兵衛に
任命してしまう。
 昂軒の後を追いかけた六兵衛だが、剣ではかなうはずも無い相手に、自分ら
しい作戦を思いついた。昂軒の行く先々で「ひとごろし」と叫ぶことであった。
めし屋でも旅籠でも道端でも、昂軒に対して大声で叫び、彼に精神的なダメー
ジを与えるのであった。

お勧めポイント

 時代劇で松田優作さん主演となれば、ハードボイルドを予感させます。し
かし実際は、なんともユーモラスな作品です。原作は山本周五郎さん。この
方の小説で映画化された作品では、「雨上がる」を思い出して頂ければ、こ
の作品のイメージも掴めるのではないでしょうか。
 サムライと言えば、強いものの象徴だと考えられる中、この作品の主人公、
六兵衛は剣では適う筈もない相手に、自分が持ち合わせているもので、それに
対抗できるものと考えた結果が叫ぶことでした。昂軒から卑怯者呼ばわりをさ
れる中、六兵衛はそのやり方を変えようとしません。ラストシーンでの二人の
やりとりの中に、私達も学ぶことができる考え方があると思います。
 主人公の松田優作さんが非常に若いです。そして個性派男優として、時代劇
ながら見事にこなしています。さらにこのようなユーモラスな演技は、松田優
作さんのファンで無くても必見です。
 面白いシーンに、上意を知った通りがかりの藩で、果し合いの場を提供し
ようとします。昂軒はこれ幸いと臨むが、一方の六兵衛は正式な立会いでは勝
機がありません。あれやこれやと言い訳をします。果してこのピンチを乗り切
れるかという所です。
 さて、この作品はどのような終わり方をするのでしょうか。これが最大の
見所だと思います。

ポイント

笑える度 :★★★
ファイト度:☆☆☆☆
ほのぼの度:★★★★
スッキリ度:☆☆☆
感動度  :★★★★