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No.637 野球少女

作品名

「野球少女」 ‘19年度作品

監督

チェ・ユンテ

出演

  • イ・ジュヨン
  • イ・ジュニョク

あらすじ

 女子でただ一人、特例として高校の野球部に所属するチュ・スイン(イ・ジュヨン)は、いよいよ卒業後の進路を決める時期になっていた。
 
 スインはリトルリーグから野球を始めた。同じく当時から野球を続けたのは幼馴染のイ・ジョンホだけになっていた。そのイ・ジョンホはプロに進むことが決まった。
 
 天才野球少女と呼ばれたスインは彼以上の実績を残していたが、高校生になった今、女子ならという条件がつくようになっていた。女子なら世界で数人しかいない速球投手だが、男子との混合では1流と呼べる選手ではなくなっていた。
 
 スインの進路希望は小さい頃から変わらず「プロ野球選手」であった。だが誰からも茶化されるだけで終わっていた。スインの母親も苦しい家計の中、高校まではスインが野球を続けるのを許したが、卒業後は普通の会社で働くことを希望していた。
 
 スインの通う高校でも、彼女がプロに成れるのは女子プロ野球で、新設野球部の話題作りにしか考えてなかった。新任コーチのチェ・ジンテ(イ・ジュニョク)も彼女がプロに成れると思わなかった。でもスインは男性・女性の区分なく選手としてやっていける場所を探していた。
 
 チェ・コーチとスインは激しく衝突した。だがいくら説得しても夢を諦めないスインにチェ・コーチも応援し始めた。チェ・コーチも実はプロになれなかった過去があった。
 
 スインは直球だけではダメだと悟り、チェ・コーチが勧める変化球ナックルの特訓を開始した。さらにチェ・コーチの働きにより、プロのトライアウト(入団テスト)に参加させてもらえることになった。このテストの結果によってはプロに成れるかもしれない。

お勧めポイント

 韓国で実在した選手をモデルに作られたスポーツドラマです。
 
 日本で女子選手がプロ野球に登場する漫画「野球狂の詩」の水原勇気が有名です。木之内みどりさん主演の実写映画にもなりました。
 
 コーチが「大事なのは速球ではない、相手に打たせないことだ」というセリフがあります。正にそうです。日本のプロ野球でも捕手が素手で取ってしまう緩いボールを投げる投手もいました。
 
 このコーチ、選手としては1流になれなかったようですが、コーチの腕は1流です。彼がコーチした選手はみんな成長しています。物語でもそれが分かるシーンが何度かあります。彼の例え話は良く分かります。
 
 主人公のスインだけでなく、彼女を取り巻く環境も多く描かれています。特に彼女の母親は、働かない父親とスイン、スインの妹を養っているだけに、スインが平凡な人生を歩みことを切望しています。それが高じてスインと対立するシーンも多いです。スインの心中を考えると、つい応援したくなります。
 
 母親が野球について何も知らない、でも娘のために何とかしてやろうと勘違いする最後のシーンは、笑えますが、同時にその親心に涙が出ます。
 
 スインが変化球を覚えるくだりがありますが、これは日本の『ナックル姫』と呼ばれた吉田えり投手をヒントにされたそうです。
 
 トライアウトには多くの入団希望者が参加します。最初は女性だと思って見下していた他の選手も、スインの投球をみて思わず応援をします。また、監督も彼女の投球に興味を持ち始めます。
 
 日本のドラマでもスポ根と呼ばれるものがよく流行ります。主人公が苦難に立ち向かっていく姿を、ようやく乗り越えたと思ったら、新たな苦難が待ち受けている展開に、主人公と一緒になって見守ってしまうものです。この作品も正にこの展開です。
 
 韓国プロ野球発足当時、医学的に男性でない者は不適格選手とされてましたが、1996年の規約改正により、女性もプロになれるようになりました。
 夢は諦めたらそれで終わります。でも諦めなかったら、いつか叶うかもしれません。
 
 スインの頑張りが周りの人も頑張ろうという前向きな態度に変えていきます。観ている人にもお裾分けしてくれます。

ポイント

笑える度   ★★
ファイト度  ☆☆☆☆☆
ほのぼの度  ★★★★
スッキリ度  ☆☆☆☆
感動度    ★★★★