配信

No.567 ふるさと

作品名

「ふるさと」 ‘83年度作品

監督

神山 征二郎

出演

  • 加藤 嘉
  • 長門 裕之
  • 樫山 文枝

あらすじ

 岐阜県徳山村に住む伝三(加藤 嘉)は、長年連れ添った妻に死なれ呆け
始めた。
 
 息子の伝六(長門 裕之)やその妻ハナ(樫山 文枝)は最初こそ丁重に
対応していたが、日増しに伝三の言動はひどくなった。見かねた伝六は庭に
隠居部屋を建て伝三を住まわせることにした。
 
 伝三は真面に振るまうこともあったが、呆けは治まる気配はなかった。
 
 対応に困っていた処、近所の小学生千太郎が伝三と仲良くなった。伝三が
釣りの名人だったと知り、伝三と頻繁に釣りに出かけるようになった。この
出歩くことが伝三に生気を取り戻させ、呆けも治まってきたかにみえた。
 
 伝三たちが住む徳山村はもうすぐ廃村になることが決まっていた。徳山村
はダム建設の影響を受けて海底に沈むからだ。この村でこの人々が暮らす時
間もあとわずかになった。
 
 ある日、千太郎に頼まれて大アマゴが釣れるという長者ケ淵に伝三と千太
郎は行くことにした。
 
 

お勧めポイント

 「ふるさとは遠きに在りて思うもの」
 
 神山征二郎監督によるドキュメンタリー風のドラマです。
 物語に登場する徳山村は実在した村で、ここで語られるダム化の話も本当
に在ったことです。映画の撮影は今は湖底に沈む徳山村で行われました。
 
 呆け老人を演じる加藤嘉(ヨシ)さんはこういう役がお似合いです。話し
方といい、その風貌といい、近所に住んでいそうなご老人です。本作でモス
クワ国際映画祭最優秀主演男優賞を受賞しました。
 
 物語の前半は昨今話題になることが多い介護の物語です。今、介護中の方
がご覧になると辛く思うかもしれません。あるいは苦労しているのは自分た
ちだけではないと安堵されるかもしれません。
 
 これから介護するかもしれない人にとっては参考になる物語です。介護が
おわった人にとっては、懐かしくもあり、思い出して涙するかもしれないシ
ーンがあります。
 
 伝三が心の声を聞かせてくれるシーンが多々ありますが、こんな風に思っ
て(現実とは違っていますが)荒れていたのかと大いに勉強になりました。
 
 昔はおじいちゃんとお孫さんが一緒に歩く姿をよく見かけましたが、あれ
は老人、子供の両方にとって良い慣習だったのですね。老人は呆けが治まり
、子供は世の中について教わることが出来たのですね。
 
 物語の後半、小学生を気遣う伝三の言葉には涙が出ます。先のある千太郎
に無理をしないように言葉を選びながら伝える伝三は本当に立派な人だと思
います。
 
 学芸会のシーンがあります。みんなで童謡「故郷」を歌います。その一節
に胸がジーンときました。3番の歌詞です。
 「志を果たして、いつの日にか帰らん」
 この村出身者は都会に出てバリバリ働いて定年後に帰ろうと思っても、あ
るいは志半ばで戻ろうとしても、母親とも言える帰る故郷は無くなっている
のです。故郷はずっとあるものと考えるのは間違いだと気づかせてくれまし
た。
 
 伝三夫婦が若かりし姿が1シーンだけ登場します。この配役が豪華です。
この俳優さんの顔立ちは加藤嘉さんによく似てます。この作品を観るまでは
考えたこともなかったのですが、見事な配役、そしてもったいないほど豪華
だと感じました。
 
 この週末は本作をご覧になられて故郷を思い出してください。
 故郷がない人は本作で観られる風景で故郷を想い描いてください。

ポイント

笑える度 :★
ファイト度:☆☆☆
ほのぼの度:★★★★
スッキリ度:☆☆
感動度  :★★★★