No.563 レッド・ファミリー｜メンタルシネマクラブ

作品名

「レッド・ファミリー」　‘13年度作品

監督

イ・ジュヒョン

出演

キム・ユミ
チョン・ウ
ソン・ビョンホ
パク・ソヨン

あらすじ

　韓国に住むミンジ（パク・ソヨン）一家はいつも仲睦まじい。周囲からは
幸せを絵に描いたような一家にしか見えない。一家で遊びに出かけては、す
ぐに家族写真を撮る。一方、隣人夫婦はいつも喧嘩ばかりしている。ミンジ
一家とは対照的だ。
　
　ミンジ一家は帰宅すると態度が急変する。母親役（キム・ユミ）の班長同
志を中心に、夫役（チョン・ウ）、祖父役（ソン・ビョンホ）、そして娘役
のミンジから構成される北朝鮮の秘密工作員なのだ。それぞれ母国にいる家
族を人質にされているので指令を実行するしかなかった。表向きは仲の良い
家族を演じているが、家の中では皆ピリピリしている他人同士だった。
　
　カメラで撮っていたのは韓国の機密情報であった。写真から判ったことを
本国に報告していた。また、同志の働きも逐一報告していた。不届きな言動
があれば、自分たちはもちろん、母国の家族にも罰則が及ぶことになる。
　
　指令はスパイ活動だけではない。時には脱北者の暗殺などもある。さすが
にこれは秘密工作員といえ、心の苛まれる作業であった。
　
　隣人の祖母とミンジの表向きの祖父は仲が良く、祖母の誕生日だというこ
とでミンジ家も招待されることになった。そこでミンジ一家はお互いの個人
的なことをほとんど知らないと気づかされた。
　
　夫役工作員の母国にいる妻が脱北したという情報が流れてきた。このまま
では夫役工作員も罰せられると危惧した班長は指令以上の活動をして成績を
上げて評価を高めようと考えた。
　
　

お勧めポイント

　『隣の芝生は、赤い』
　最初に説明しておきます。この作品は感動のヒューマンドラマです。
　シリアスな内容でありながら、ユーモアに溢れた作品です。
　
　隣に住むのは自分たちと同じ市民だと思ったら大間違い。まさかこんな人
たちが住んでいるとは夢にも思いませんから、ギクシャクした言動も変人ぐ
らいですませてしまいます。隣の奥さんの無駄遣いにぼやく班長が笑えます
。
　
　隣人一家は喧嘩ばかりしていますが、本音で語り合っています。一方、主
人公たちは表向きは仲の良い家族を演じていますが、みんな家族愛に飢えて
います。喧嘩ばかりしている隣人一家をうらやましくてしかたがないのでし
た。
　
　私たちにもよく分かるシーンがあります。「川の字」で寝ている隣人一家
を、羨ましそうに見つめるミンジ一家の人たちは、どれほど真似てみたいと
思ったことでしょう。夫婦役でも家の中で手一つ握ることがありません。
　
　隣人一家との会食中にTVで北朝鮮のニュースが流れてきます。それをきっ
かけに論争が始まります。みんな同じ韓国人だと思って会話しているのです
が、両国の代表のような主張になります。このシーンに監督が言いたかった
ことが凝縮されているように思います。
　
　ラストシーンが本当に泣けます。工作員は隣人一家に洗脳されたと思われ
ていますが、そういうことではないのをここまで観た人にはよく判ります。
潜入している他の工作員たちも気づいていることです。最後にちょっと救わ
れた気分になるのも素晴らしい展開です。
　
　題材は重苦しいものですが、家族愛・人間愛を大切にした作品です。
　どうぞこの週末はこの作品を御覧ください。