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No.655 イヴの時間

作品名

「イヴの時間」 ‘09年度作品

監督

吉浦 康裕

出演

  • 福山 潤
  • 野島 健児
  • 田中 理恵

あらすじ

 人間型ロボット(アンドロイド)が実用化された。人間との見分けは頭上で回転しているリングぐらいだ。
 
 人間の支配下で従事するロボットがほとんどの家庭で稼働していた。リクオ(福山潤)の家でもサミィ(田中理恵)と名付けられた女性型アンドロイドがいた。
 
 ある日、リクオはサミィが指示されていない場所に寄り道しているのをログ(履歴)から発見した。
 
 リクオは学友のマサキ(野島健児)を誘って、その場所を訪れてみた。そこは『イヴの時間』という喫茶店だった。店に入った途端、二人はそこに書かれた注意書きに目が釘付けになった。それは『当店内では人間とロボットの区別をしません』と書かれた黒板だった。
 
 そこには数名の客がいたが、アンドロイドと思われる人の頭上に回転しているリングはなく、人間と区別がつかなくなっていた。
 
 人懐こく接してくる人(あるいはアンドロイド)や店長から、ここがどういう空間であるかを知った。しばらくするとサミィがその店に現われた。だがリクオがいるのを知ると出て行ってしまった。
 
 家でサミィはそのことについて何も言わなかった。いや、リクオがその件について質問しない限りは、サミィからは答えないかもしれない。
 
 最近、倫理委員会なる組織がアンドロイドの行動監視を強化していた。

お勧めポイント

 コミカルでもありシリアスでもあるSFアニメ作品です。
 
 本作に登場する多くはアンドロイドと呼ばれる人型ロボットです。著名なSF作家であるアイザック・アシモフ氏が彼の小説に書いたのがロボット三原則と呼ばれるものです。1950年代に書かれた小説なのですが、現在に至るまで受け継がれるロボットの原則になっています。
 
 【ロボット三原則】
 1.ロボットは人間に危害を加えてはならない
 2.ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない
 3.自己をまもらなければならない
 
 私はSF短編集を偶然読んだのですが、その中にアシモフ氏の三原則が書かれた作品もありました。こんなに有名な原則だとはその本を読んだ数十年後に知りました。
 
 本作では人間とアンドロイドが恋愛感情を持ったり、アンドロイド同士の恋愛もあったりと、相手に関係なく感情が移入してきます。それが可能になるのが『イヴの時間』です。相手を先入観なしに受け入れて交流を深めていくことが可能だからです。
 
 シリアスなシーンも多いですが、笑えたり、涙したりするシーンも多々あり、この作品はジャンル分けが本当に難しいです。
 
 監督は本作の原作者でもある吉浦康裕さんです。本作の後、『サカサマのパテオ』や『アイの歌声を聴かせて』などで監督や原作を手掛けているSFアニメ作品の第一人者です。
 
 AIが実用化される分野が増えてきました。この三原則はAIにも受け継がれています。いよいよロボットと人間が共存していく時代が近づいてきました。いつまでも良きパートナーとして共に歩いていけたら良いなと思います。もちろん人間同士もロボットに拒否されないように仲良くしていきたいものです。
 
 エンドロールになったからと安心したらダメですよ。ここからが一番涙が出る『イブの時間』の創成期が語られています。

ポイント

笑える度   ★★★
ファイト度  ☆☆☆☆
ほのぼの度  ★★★
スッキリ度  ☆☆☆
感動度    ★★★★

イヴの時間